「佐藤昇君を応援する会」レイズ(文智勇)事件判決検証ページ
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1.検証その1
2.検証その2
3.検証その3
4.検証その4
5.検証その5
6.検証その6
7.検証その7

佐藤昇君と応援する会の有志のメンバーたちは、控訴審棄却という結果に大きな衝撃を受けました。
しかし、佐藤昇君は、上告申立はしたものの、取下げて、上告審は争いませんでした。
司法の判断に対して、もはや“諦め”を感じていたからです。
控訴審棄却と同時に身柄は再び拘束され、
仕事もできず、上告には多額の費用がかかる。
そして現在の三審制の中で、最高裁で逆転勝訴することは極めて難しい──
冷静に考えれば、時間の浪費を最小限にして再出発した方が良い。
佐藤昇君はそう判断しました。
そして今、復帰した佐藤昇君は、
新たな気持ちで「週刊報道サイト」を再び影響力ある媒体へと育てるべく、
前を向いて歩き始めています。
その再出発のために。
そして佐藤昇君を知る人、週刊報道サイトを支えてきた読者のために。
「佐藤昇君を応援する会」は、
この裁判が実際にどのような内容だったのかを、
裁判資料に基づいて正確に伝える必要がある。
そう考えました。
その思いから、私たちは以下の7本の検証記事を作成しました。
これは、佐藤昇君の名誉のためだけではなく、
同じような境遇に置かれた人々のためにも、
司法のあり方を問うためにも必要な記録です。
[その1] 「害悪の告知は存在しない」──和解協議の証拠の抹殺
では、佐藤君が有罪となったレイズ社への恐喝事件について、順を追って解説していこう。
まず、事件の概略は以下のとおりである。
1. 事件の概略
「週刊報道サイト」に掲載された記事をめぐり、佐藤君とレイズ社の間にはトラブルがあった。
レイズ社は高橋康允弁護士を窓口として、佐藤君と記事削除などの交渉を行う。その交渉の中で出た言葉や、記事削除のための和解金の話が、レイズ社代表・文智勇氏への恐喝にあたるとされた。
さらに、佐藤君がレイズ社に関する別の記事を掲載する際に送った取材申込書、そしてその取材申込書や和解についての回答を求める通知書も、恐喝の構成要件に含まれるとされた。
一連の出来事は令和4年のことである。
2. 結論:「害悪の告知」は存在しない
先に結論を述べてしまうと、
佐藤君は“害悪の告知”をしていないにもかかわらず、有罪とされた。
「害悪の告知」とは恐喝罪(未遂を含む)の成立要件で、簡単に言えば“脅し文句”のことである。
判決文を読む限り、佐藤君はまるで典型的な恐喝犯のように描かれている。もちろん、実際は違う。この判決文には、佐藤君が恐喝をしたように見せかける巧妙なトリックがいくつかある。この章ではとりあえず以下の2点について説明したい。
A.恐喝的な言葉を、佐藤君が文氏に伝えたかのように錯覚させる文章構成
B.和解協議の証拠の抹殺
まず、判決文の<罪となるべき事実>を見ていただきたい。ここは極めて重要な部分である。
(判決文引用)
…レイズ社から本件各記事の削除を求められた際、同社等から金銭を喝取しようと考え、令和4年6月28日、電話で…
「慰謝の措置をとるしかない」「相応の対価がないと消すことはできない」「大体6本だと通常600万から始まりますね」
「そのかわり全部Not Foundにして記事はあがらない」「文さんはいろんなトコと裁判やってる」
「僕のさじ加減で記事あげるあげないやってるだけ」
…などと言って、現金600万円を支払えば記事を削除し、今後記事を掲載しない旨伝え…
気分の悪くなるような“脅し文句”が、これでもかというほど並んでいる。
そして佐藤君は、弁護士を介してこの文言を文氏に告知し、恐喝未遂罪が成立したとされた。しかし、この部分には重大な問題がある。 <判決文>
判決文のリンクを入れてください。
https://note.com/hagemasukai2024/n/n27804c8bae53
3. A.“脅し文句”を文氏に伝えたかのように錯覚させる構成
判決文の書き方は、あたかも次のような流れで事実が進んだかのように読める構成になっている。
1. 6月28日、佐藤君が高橋弁護士に対して、強い言葉(いわゆる“脅し文句”)を述べた。
2. その内容を、高橋弁護士が「600万円を払えば削除し、今後は掲載しない」という“結論部分”として受け取った。
3. そして7月4日、その“内容”が文氏に伝えられた。
この三つを並べることで、判決文は 「佐藤君の“脅し文句”が、そのまま文氏に伝わった」 かのような印象を与える。
しかし実際には、文氏に伝わったのは“脅し文句”ではなく、 判決文に記載されている次の“結論部分”だけである。
「現金600万円を支払えば本件各記事の削除に応じ、 今後レイズ社及びムンらに関する記事は掲載しない」
つまり、 害悪の告知(脅し文句)は文氏に伝わっていない。 それを書いてしまうと恐喝未遂罪が成立しないため、 裁判官は“脅し文句”を“結論部分”にすり替えて記述している。
この“すり替え”こそが、判決文の最大の問題点である。
判決文はこのような流れで事実を並べているため、 読者には 「佐藤君の“脅し文句”がそのまま文氏に伝わった」 かのような印象を与える。 しかし実際には、文氏に伝わったのは“脅し文句”ではなく、 高橋弁護士が受け取った 「600万円を払えば削除し、今後は掲載しない」という結論部分だけ である。
a)文氏に伝えられた内容は「お金を払えば削除する」だけ
以下は、7月4日に高橋弁護士が文氏(レイズ社)に送ったメールである。
ご覧いただければわかるとおり、
判決文に書かれたような“脅し文句”は一言も記されていない。
伝えられているのは、
● 「お金を払ってくれれば記事を削除する」
● 「1本100万円、6本で600万円」
● 「払うか放置するかの二択」
という、単なる削除交渉の内容だけである。つまり、“脅し文句”は文氏に伝えられていない。それにもかかわらず、判決文はあたかも伝えられたかのように構成されているのである。
b)判決文が仕掛けた“すり替え”の構造
判決文の「認められる事実」には、次のように記載されている。
<週刊報道サイトからの回答内容として、端的に金を払ってもらえれば削除する、基本的に1本100万円(本件は合計6本ある)などとし、金銭を支払うか、このまま放置するかの二択である旨伝えたところ、ムンは「当分は放置にしましょう」と返信した>
ここには、佐藤君が6月28日に口頭で述べた“脅し文句”は一切登場しない。 判決文が書いているのは、あくまで 「600万円を払えば削除し、今後は掲載しない」という“結論部分”だけ である。
しかし判決文は、この“結論部分”を あたかも“脅し文句の内容が文氏に伝わった結果”であるかのように配置している。
その理由は明白だ。
● 恐喝未遂罪は「害悪の告知が被害者に伝わること」が成立要件
● だが、脅し文句は文氏に伝わっていない
● その事実を正面から書くと、恐喝未遂は成立しない
だから裁判官は、 “脅し文句” → “結論部分”へのすり替え という構造を判決文の中に巧妙に埋め込み、 読者(裁判所の読み手)に「脅し文句が伝わった」かのような印象を与えているのである。
4. B.和解協議の証拠の抹殺
佐藤君と高橋弁護士は、6月28日の電話の前、6月15日の時点で既に和解協議をしていた。この事実は、恐喝未遂の成立にとって致命的である。なぜなら、和解協議の中で金銭の話が出るのは当然であり、恐喝とは全く異なるからだ。そのため判決文は、この6月15日の電話を完全に無視している。
<6月15日の電話会話>*リンクをつけてください。
<6月15日の電話会話文字起し>*リンクをつけてください。https://note.com/preview/nfbd8ef2885c4?prev_access_key=cf8419e5e0d3a32040139fb40cb63cbb 
6月15日の録音では、高橋弁護士がこう述べている。
「これはあくまで和解協議なんで。外に出さないでほしい」
このように記事削除の話は和解交渉として行われていた。和解交渉で「削除には対価が必要」と話すのは当然であり、これを恐喝とみなすのは不可能である。
それでも裁判官は6月28日を「恐喝の実行の着手」とした。
6月15日の和解協議を無視し、
6月28日の電話だけを切り取って「恐喝未遂の開始」とした。
さらに、6月28日の会話からは交渉部分を削り、“脅し文句”だけを抽出して恐喝に仕立て上げた。
これは事実認定として極めて不自然である。
<6月28日の電話会話>*リンクをつけてください
<6月28日の電話会話文字起し>*リンクをつけてください。
https://note.com/preview/na70ca149ea0b?prev_access_key=29ffefba5f8ab6df6d8e27cb5fab0d6b
5. まとめ:害悪の告知は存在しない。恐喝未遂は成立しない。
ここまで見てきたように、
● “脅し文句”は文氏に伝えられていない
● メールには削除交渉の内容しか書かれていない
● 6月15日から和解協議が始まっていた
● 6月28日の会話も和解交渉の延長
● 裁判官は不都合な事実を無視し、文章構成で錯覚を生しさせた
以上から、
恐喝未遂罪の成立要件である「害悪の告知」は存在しない。
にもかかわらず有罪とされたこの判決は、刑事裁判の基本原則を揺るがす重大な問題を抱えている。
[その2] なぜ電話会談が行われたのか──仮処分から始まる「交渉の全体像」
前回の記事では、判決文が“脅し文句が伝わったように見せる構成”を採用している点を説明した。
しかし、そもそも なぜ佐藤君とレイズ社の間で電話会談が行われることになったのか──
この章では「事件の前提となる流れ」を解説し、恐喝未遂罪の成立を根本から揺るがす「和解協議の証拠の抹殺」を改めて詳しく書かせていただく。
1. すべての出発点は「仮処分」だった
佐藤君とレイズ社の関係がこじれ始めたのは、レイズ社が佐藤君の記事に対して 処分を申し立てたことがきっかけだ。 仮処分の対象となったのは、 レイズ社が名誉毀損に当たると主張した“1本の記事”であり、判決文ではこれを「本件仮処分記事」と呼んでいる。この「本件仮処分記事」は、 レイズ社と関連企業の関係性などについて報じた内容で、 レイズ社側が「事実と異なる」「名誉を傷つける」と問題視した記事である。
<本件仮処分記事>
http://hodotokushu.net/kaiin/kiji20210517n.html
そのためレイズ社は、この記事の削除を求めて 令和4年3月4日に仮処分命令を申し立て、裁判所で審尋(事実確認の手続)が行われていた。 この仮処分の審尋(手続の経過)について、佐藤君はその経過を報じる6本の記事(本件各記事)を掲載した。つまり、佐藤君が書いた記事は大きく分けて2種類ある。
1. 仮処分の対象となった1本の記事
2. その裁判経過を報じた6本の記事
そして、2.の「6本の記事」が、後にレイズ社側の“削除依頼”の対象となる。
<本件各記事>*リンクをつけてください。
2. レイズ社は「6本の記事」を問題視した
6月15日の電話記録によれば、レイズ社は高橋弁護士との打ち合わせの中で、こう伝えている。
「裁判経過の記事(6本)をどうにかしてほしい」
つまり、レイズ社は
仮処分の対象となった1本の記事ではなく、その経過を報じた6本の記事も削除したい
と考えていた。 しかし佐藤君は、これを即座に拒否している。
「それは難しいです。だって文から訴えてきたものなんで」
ここで重要なのは、
● 6本の記事の削除依頼はレイズ社側から始まった
● 佐藤君は最初から削除に応じていない
という点である。
3. 6月15日の電話は「和解協議の開始」だった
6月15日の電話の中で、高橋弁護士はこう述べている。
「これはあくまで和解協議なんで。外に出さないでほしい」
この一言は決定的だ。
つまり、
● 記事削除の話は“恐喝”ではなく“和解交渉”として始まっていた
● レイズ社側が削除を求め、佐藤君が応じるかどうかを話し合っていた
という構図が明確になる。
この時点で、佐藤君が“記事削除をネタに金を要求した”という判決のストーリーは成立しない。
4. なぜ6月28日に再び電話会談が行われたのか?
6月15日の段階で、佐藤君は削除依頼を拒否している。しかしレイズ社側は諦めていなかった。
● レイズ社は「6本の記事をどうにかしてほしい」と強く希望
● 佐藤君は「削除は難しい」と拒否
● しかしレイズ社側は“別の終わらせ方”を模索
● そのため、高橋弁護士が再度佐藤君に連絡
● これが 6月28日の電話会談 につながる
つまり、
6月28日の電話は、6月15日の和解協議の“続き”として行われた
ということだ。判決文はこの前提を完全に無視している。
5. 6月28日の電話は「削除の条件を詰める交渉」だった
6月28日の電話では、次のような話が行われている。
● 記事を消すにはどういう方法があるか?(高橋弁護士)
● 慰謝の措置=対価が必要(佐藤君)
● 全部消すなら600万円(佐藤君)
● 6本だけならもっと安くできる(佐藤君)
● 示談書を作る話(双方)
これは、記事削除の条件を詰める和解交渉そのものである。ここでも、“払わなければ記事を出す”という害悪の告知は一切存在しない。しかし、裁判官は「交渉部分」を切り捨て、“脅し文句”だけを抽出した。
● 「慰謝の措置をとるしかない」
● 「相応の対価がないと消すことはできない」
● 「6本で600万」
● 「僕のさじ加減で記事をあげるあげない」
これらの言葉だけを見ると、確かに恐喝的に見えるかもしれない。
しかし、交渉の文脈を無視して“言葉だけ”を切り取れば、どんな会話も恐喝に見えてしまう。裁判官は、和解協議の流れを意図的に排除し、“恐喝に見える部分だけ”を抽出して判決文に書き込んだのである。
6.和解協議の証拠は他にも存在する
和解協議であることを示す証拠は、6月15日の録音だけではない。
● 証拠1:7月4日の高橋弁護士メール
メールのタイトルはこうだ。
「対週刊報道サイトの仮処分手続に係る記事削除交渉の件」
これは、記事削除が“交渉”であることを明確に示す文言である。さらにメールには、
「上限額を頂ければ、その範囲で削除交渉いたします」
と書かれている。これは、弁護士が“削除交渉”を正式に引き受けているという意味であり、恐喝とは真逆の行為である。
<7月4日の高橋弁護士メール>*リンクをつけてください。メールにはレイズ社員のメアドも記載されているので、そういう個人情報を消して載せてください。
● 証拠2:8月9日の高橋弁護士メール
文氏からの問い合わせに対し、高橋弁護士はこう答えている。
「金銭要求については、当方側より記事の削除についてもちかけ、その回答として『お金を払ってくれれば削除には応じる』と述べたに過ぎず、刑事上の脅迫罪等に該当するとはいい難いです」
これは、高橋弁護士自身が和解交渉と認識していた証拠である。
<8月9日の高橋弁護士メール>*リンクをつけてください。メールにはレイズ社員のメアドも記載されているので、そういう個人情報を消して載せてください。
7. 裁判官はなぜ和解協議を無視したのか?
理由は明白だ。
和解協議が存在すると、恐喝未遂罪が成立しなくなるからである。
恐喝未遂罪の成立には、
● 害悪の告知
● 畏怖
● 財産上の利益要求
● 因果関係
が必要だが、和解協議の中で金銭の話が出るのは当然であり、“害悪の告知”とは全く異なる。裁判官はこの矛盾を避けるため、6月15日の和解協議を判決文から完全に排除した。さらに、
● 6月28日の会話から交渉部分を削除
● “脅し文句”だけを抽出
● メールの内容を歪めて解釈
● 和解協議の証拠を評価しない
というトリックを駆使して、恐喝未遂罪を成立させるための“事実の再構成”を行ったのである。
本来、刑事裁判は厳格な証拠に基づいて行われるべきだ。しかしこの判決は、不都合な証拠を排除し、都合の良い部分だけをつなぎ合わせたと言われても仕方がない内容になっている。
[その3] 「畏怖の認定の問題点」──恐怖はどこにあったのか
前回までの記事では、判決文が“害悪の告知があったように錯覚させる構成”になっている点、そして和解協議の証拠が抹殺されている点について解説した。
今回は、恐喝罪の成立に欠かせないもう一つの要件、「畏怖(いふ)」の認定について見ていきたい。
結論から言えば、この事件で「畏怖」が成立したとする裁判所の判断には、重大な問題がある。なぜなら、客観的な証拠を見れば、レイズ社側が“恐怖”を感じていたとは到底言えないからだ。
? 1. 畏怖とは何か?
まず、刑法上の「畏怖」とは何かを簡単に整理しておこう。
畏怖とは、
相手の害悪の告知によって
自由な意思決定が困難になるほどの恐怖を感じ
その恐怖により財産上の利益を交付する(または交付しようとする)
という心理状態を指す。
つまり、「怖くて逆らえない」状態でなければ、畏怖とは言えない。単なる「困っている」「迷惑している」「悩んでいる」では畏怖にはならない。
しかし、レイズ社のメールは“恐怖”とは程遠い。判決文では、レイズ社代表の文氏が「恐怖を感じた」と供述したことを根拠に畏怖を認定しているが、実際のメールの内容を見ると、その供述と客観的事実は大きく矛盾している。
以下は、前章で触れた7月4日に高橋弁護士から文氏に送られたメールに対する文氏の返信(7月5日)である。
「当分は放置にしましょう」
この一文だけでも、文氏が“恐怖で判断能力を失っていた”とは到底言えない。
むしろ、 記事削除に応じるかどうかを冷静に検討し
「放置」という選択肢を合理的に選び
その判断を弁護士に伝えている
という、落ち着いたビジネス判断をしている。
さらに重要なのは、文氏の代理人である高橋弁護士の態度である。
高橋弁護士は、
「放置も選択肢」
「記事の影響力は大きくない」
「示談書を作ればよい」
「上限額を決めて削除交渉する」
など、終始冷静に状況を分析している。
もし本当に恐喝されていたなら、弁護士がここまで落ち着いて“交渉”を進めることはあり得ない。弁護士が冷静であるということは、依頼者が畏怖していないことの強力な間接証拠である。
? 2.裁判官は「メールの内容」ではなく「文氏の供述」を採用した
では、なぜ裁判官は畏怖を認定したのか?
理由は単純で、文氏が「怖かった」と供述したからである。しかし、刑事裁判では供述よりも客観証拠が優先されるべきだ。特に、供述が客観証拠と矛盾している場合は、供述の信用性は大きく低下する。
本件では、
メール
弁護士の態度
交渉の流れ
文氏の合理的判断
これらすべてが「畏怖は存在しない」と示している。にもかかわらず裁判官は、客観証拠を無視し、文氏の主観的供述だけを採用した。これは、刑事裁判の基本原則に反する。
? 3. 畏怖の認定には「合理性」が必要
畏怖の認定には、被害者が恐怖を感じることが“合理的”でなければならない。しかし本件では、
記事の影響力は大きくない
記事削除は和解交渉の一環
弁護士が冷静に対応
文氏は「放置」を選択
記事掲載は合法的な報道行為と判断
これらの事情から、文氏が恐怖を感じる合理的理由は存在しない。合理性のない畏怖は、畏怖とは言えない。
? 4. 裁判官は「構造的畏怖」という推論で補った
判決文を読むと、裁判官は次のように推論していることがわかる。
1. 記事掲載は名誉・信用に不利益を与える
2. 金銭要求と記事掲載の話が近接している
3. だから「払わなければ記事を出す」という構造が成立
4. その構造を知れば普通は恐怖を感じる
5. よって文氏も恐怖を感じたはずだ
つまり、「恐怖を感じたはずだ」という推論で畏怖を認定したのである。
以上から、畏怖の成立は客観的に見て不可能である。畏怖が成立しない以上、恐喝未遂罪は成立しない。それにもかかわらず有罪とされたこの判決は、刑事裁判の基本原則を大きく逸脱していると言わざるを得ない。
[その4]“どの記事が害悪なのか”を曖昧にし、事実認定を放棄した判決の致命的欠陥
本件判決の最大の欠陥は、恐喝罪の成立に不可欠な「どのような害悪を告知したのか」という核心部分がまったく特定されていない点にある。あろうことか裁判所は、起訴状を無批判に丸写ししたうえで、証拠との矛盾が生じた部分を「など」という一語で不当に拡大解釈し、有罪の辻褄合わせを行っているのである。
1. 「害悪の告知」認定に求められる厳格な特定要件
本来、刑事裁判において恐喝罪の「害悪の告知」を認定するには、厳格な特定が求められる。具体的には、
・ どの記事の
・ どの表現が
・ どのように被害者の名誉や利益を侵害するのか
を一つひとつ明確に特定しなければならない。これは刑法の基本原則である「罪刑法定主義」に基づく要請であり、これらの特定を欠いたままでは恐喝罪の構成要件を満たさない。 ところが、本件判決文をいくら読み込んでも、この記事・表現・侵害プロセスの特定作業は一切なされていない。裁判所は、最も重要なこの義務を事実上放棄しているのである。
2.公訴事実の「害悪」と、実際の「6本の記事」の決定的な矛盾
そもそも、起訴状(公訴事実)において、恐喝の手段とされた記事群は次のように定義されていた。
(起訴状より)
「レイズ社及びムンが融資の仲介を巡り不正な利益を得たなどの記事を複数掲載していたこと」
<起訴状のリンク>
https://note.com/preview/nbc93a93a9c41?prev_access_key=f1cb91695bf24b49d25effb11b18c0b4
ここでの「など」は、文脈上「不正な利益を得た」に類する名誉毀損的な内容を指す。つまり、公訴事実が想定する「本件各記事」とは、レイズ社らの名誉を毀損する記事群に限定されるはずである。
しかし、実際にレイズ社側が削除を求めたのは「仮処分事件の審尋(6本の)記事」であり、これらには「不正な利益を得た」といった名誉毀損的な記述は一切存在しない。
つまり、公訴事実が想定した“名誉毀損記事”と、実際に削除を求められた“6本の審尋記事”は内容がまったく一致していないのである。
3.証拠に基づかない「起訴状の丸写し」による事実認定の放棄
しかも、第一審の裁判官は、実際の証拠(6本の記事内容)を精査することなく、検察が作成した起訴状のストーリーをそのまま「事実認定」として引き写しているという点である。 本来、刑事裁判においては、法廷に提出された客観的証拠に基づき、そこに名誉毀損性や害悪性が存在するかを裁判所が独自に判断しなければならない。しかし本件では、記事の具体的内容や性質を一切分析せず、起訴状の曖昧な主張を無批判に丸呑みして判決の土台に据えた。検察の主張を追認するだけという、事実認定の完全な放棄である。
4.矛盾を糊塗するための、判決文による「など」の不当な拡大解釈
さらに裁判所は、起訴状を丸呑みした結果生じた「実際の記事(審尋経過)」との決定的なズレを解消するため、判決文の「罪となるべき事実」において公訴事実を勝手に書き換えるという暴挙に出た。判決文では「本件各記事」を次のように定義し直している。
(判決文より)
「レイズ社及びムンが融資の仲介を巡り不正な利益を得たという内容とともに、仮処分命令の裁判資料を転載するなどの記事を複数掲載していたこと」
起訴状の「など」という曖昧な一語を巧みに活用し、起訴状には存在しなかった「仮処分命令の裁判資料を転載する」という文言を勝手に追加したのである。
ここでいう裁判資料の転載とは、レイズ社が裁判所に提出した「仮処分命令の申立書」の画像をそのまま誌面に掲載することを指す。 「仮処分命令の申立書」をそのまま掲載することは、法廷でどのような主張がなされ、どのような手続きが進んでいるかという客観的な「裁判経過の事実」をありのままに報じたにすぎない。プライバシー権の侵害などの特別な事情がない限り、公的機関である裁判所の書面を公開することは、報道として極めて正当な行為である。しかし裁判所は、この事務的な事実記載を、「不正な利益を得た」とする名誉毀損的な記述と意図的に同列に扱い、一括りにして「恐喝の材料(害悪)」へと仕立て上げたのである。
これにより、本来は名誉毀損性のない無害な「6本の記事」をも、強引に“害悪記事(本件各記事)”の枠内に押し込んでしまった。
(註:ちなみに「仮処分命令の申立書」の内容はそもそも名誉棄損に該当する資料とは言えない。このことは「レイズ社判決編その3」*リンクをつけてください。を見ていただきたい。
5.裁判官は「仮処分命令申立書」と「陳述書」を混同し、畏怖の認定を誤った
本件判決の混乱は、裁判官が「本件各記事」の内容を無理に整合させようとした結果、 判決文全体がもはやチンプンカンプンで理解不能な構成になってしまっている点にある。 その破綻した構成の中で、よくよく読むと、 本来まったく性質の異なる「仮処分命令申立書」と「陳述書」まで混同して扱っている という状況が露呈している。
裁判官は、起訴状の構成に合わせるために、「仮処分命令申立書」の画像まで本件各記事に含める という無理な整理を行った。 しかし、文氏の証人尋問を丁寧に読むと、文氏が「仮処分命令申立書」について述べたのは、「載っていた」という事実確認にすぎず、そこに不満や恐怖を感じた事は一切記述されていない。
文氏が本当に不満を述べたのは、審尋のために提出した自らの陳述書などの証拠を、佐藤君が“つまみ食い”的に引用したことである。 つまり、文氏の問題意識は「仮処分命令申立書」ではなく「陳述書の扱われ方」にあった。
ところが裁判官は、検察官の冒頭陳述の文言を引用して、
「非公開を前提とする文の陳述書等の内容を投稿するなどとしていた」
と書きながら、次の段落では突如として、
「そして、本件各記事には、いずれも、本件仮処分事件の申立書そのものが含まれているところ、同申立書には、本件仮処分事件の手続の中で、週刊報道サイト側が訂正することにした部分3か所が、訂正前の形で別紙として引用され、これが令和5年1月4日時点でも閲覧できる状態となつていた」
と論旨をすり替え、 陳述書の話がなぜか仮処分申立書の話に変えてしまっている。
理解不能な判決文の該当箇所。
本来、名誉毀損の根拠とされたのは「非公開を前提とする陳述書等の内容を投稿した」ことだった。ところが、判決文ではそれがなぜか「仮処分事件の申立書」に“変換”されてしまっている。しかも、検察の公訴事実がそのまま事実として認定されている。
控訴審の3人の裁判官は、この部分を読み飛ばしたのだろうか――。
この時点で、裁判官は
・ 仮処分申立書
・ 文氏の陳述書
・ 審尋経過記事
といった性質の異なる文書を丁寧に区別して検討した形跡がない。もしかすると裁判官は、佐藤君の記事そのものをろくに見ないで、 起訴状や検察のストーリーだけを頼りに判決文を作ってしまったのではないか?実際、判決文を読む限り、裁判官は
・ 記事の内容
・ 記事の性質
・ 記事の影響力
・ 記事の公益性
について、ほとんど検討していない。
さらに致命的なのは、 文氏が畏怖を感じたのは陳述書でも申立書でもなく、 まったく別の後続記事(不正関与を示唆する記事、取材申込み、内容証明)であった という点である。
文氏は、陳述書の扱われ方については「非常に迷惑」といった趣旨を述べているものの、 「怖い」「畏怖した」と証言したことは一度もない。 畏怖の中心は、会社の信用・融資・訴訟リスクに直結する 別の記事群 にあった。
にもかかわらず、判決文は 文氏が恐怖していない仮処分命令申立書や、単なる不満にすぎない陳述書の引用を“害悪の中心”として扱い、 畏怖の認定を行っている。 これは、恐喝罪の成立に不可欠な 「害悪の特定」および「畏怖の認定」 を根本から誤ったものであり、 判決の事実認定はまるでデタラメと言わざるを得ない。
文氏の証言の要点:
仮処分命令申立書 → 「載っていた」だけで不満なし
陳述書 → 「つまみ食いされて困った」程度
畏怖したのは → 別の記事((証拠を握られたことや取材申込み))
6.恐喝罪には「害悪の内容の特定」が必須であるにもかかわらず、判決はこれを放棄している 恐喝罪の成立には、 “どのような害悪を告知したのか”が明確であること が絶対条件である。 これは刑法の基本原則である「罪刑法定主義」に基づくもので、 曖昧なままでは構成要件を満たさない。
つまり、裁判所は本来、
・ どの記事を
・ どのように利用して
・ どんな不利益を与えると告知したのか
を一つひとつ特定しなければならない。ところが本件判決では、この最も重要な部分が曖昧にされたまま、「害悪の告知があった」と結論づけている。
A)判決文からは、どの記事が「害悪」なのか読み取れない
判決文の構成は次のようになっている。
・ 佐藤君が高橋弁護士に“脅し文句”を述べた
・ その内容は「本件各記事」の削除と今後の記事掲載停止
・ それが文氏に伝えられた
・ よって害悪の告知が成立した
しかし、ここで最も重要な “本件各記事とは具体的にどの記事なのか?” という点が、判決文からは読み取れない。つまり恐喝罪の構成要件である 「害悪の内容の特定」 を満たしていない。
B) 記事の特定が曖昧だと、畏怖の認定も成立しない
記事の特定が曖昧なままでは、次の判断が不可能になる。
・ 文氏がどの記事を出されることに恐怖を感じたのか
・ その記事がどの程度の不利益を与える性質なのか
・ その不利益が“合理的な恐怖”を生むのか
例えば、
・ 仮処分審尋の記事(裁判経過の報告) と
・ 不正利益疑惑の記事(名誉毀損性が高い可能性)
では、畏怖の程度はまったく異なる。
にもかかわらず、判決文はこれらを区別せず、 “記事”という抽象的な概念だけで畏怖を認定している。これは、畏怖の認定としても致命的に不十分である。
C)裁判官は「記事の特定」を放棄し、畏怖の認定を起訴状に丸投げした
前節で述べたとおり、裁判官は
・ 仮処分命令申立書
・ 陳述書
・ 審尋経過記事
という性質の異なる文書を区別せず、「もしかすると佐藤君の記事を精査せず、起訴状だけを見て判決を書いたのではないか」と疑われるほど粗雑に扱っている。その結果、裁判官が“害悪”と認定した対象が仮処分命令申立書となってしまった。
これは、恐喝罪の成立に不可欠な
・ 害悪の特定
・ 畏怖の認定
の両方を同時に欠く、致命的な事実認定の誤りである。
[その5] 取材申込書を“害悪の告知”に仕立てた裁判官の曲解
これまで、裁判官が“脅し文句が伝わったように見せる構成”を採用し、和解協議の証拠を抹殺した点を解説した。しかし、判決の問題はそれだけではない。
本件では、通常の取材行為である取材申込書までが、裁判官によって“害悪の告知”として扱われている。これは報道実務の観点から見ても極めて異常であり、こうした判断が生まれた背景には、検察が描いた「連続性ストーリー」に裁判官が協力したという構造があると考えるのが自然である。
1.裁判官が“恐喝の要素”と認定した取材申込書と通知書について
本件判決では、
6月28日の電話 → 8月2日の取材申込書 → 8月17日の通知書
という一連の流れが「恐喝の連続行為」として扱われている。
このうち裁判官が“害悪の告知”として評価したのは、
● 6月28日の電話
● 8月2日の取材申込書
の2つである。
一方、通知書そのものは害悪の告知とは認定されていない。ただし通知書は、
「害悪の告知によって畏怖した文氏に対して行われた金銭要求」
という位置づけで、恐喝の後段に組み込まれている。
ここで重要なのは、検察自身が、6月28日の電話も取材申込書も単独では恐喝の構成要件を満たさないことを理解していたという点である。
● 取材申込書(8月2日)(*このままリンクをつけてください) 
これは、新聞社・テレビ局・週刊誌を含む主要メディアが日常的に行う「事実確認」の手続きである。内容は極めてシンプルで、
● 回答があれば反映する
● 回答がなければ取材で把握している事実に基づいて報道する
という、誤認を避けるための基本的な取材手続きであり、誤報による名誉毀損を避ける目的もある。もちろん金銭要求とは無関係であり、むしろ反論の機会を丁寧に与える慎重な取材姿勢である。
検察も裁判官も、これ単独では害悪の告知にできないことは理解していたはずである。にもかかわらず裁判官は、この通常の取材行為を 「不利益を告知する脅し」=害悪の告知
と読み替えた。
● 通知書(8月17日)(*このままリンクをつけてください)
通知書は、
● 6月28日の和解協議の返答が来ていないことの確認
● 取材申込書への回答の催促
● 示談条件(600万円)の再提示
という、完全に民事的・事務的なフォローアップ文書である。
不利益を告知する文言は一切なく、「本書送達後7日以内にご回答ください」という回答要求が中心である。
裁判官も通知書を「害悪の告知」とは認定していない。しかし判決では、
“害悪の告知によって畏怖した文氏に対して行われた金銭要求”
という位置づけで、恐喝の後段に組み込まれている。
2.起訴状は、これらを「連続した恐喝行為」とする物語を描いた
ここが本件の核心である。
この3つの行為は本来、性質も目的も文脈も全く異なる独立した出来事である。
● 6月28日の電話は、レイズ社側の削除依頼に対する和解交渉
● 8月2日の取材申込書は、別件の記事に関する通常の取材行為
● 8月17日の通知書は、この2つの全く別の話題をまとめて問い合わせた文書
つまり、3つの行為には本来、恐喝としての連続性も因果関係も存在しない。
a)  検察は「どれも弱い」ことを理解していた
検察は、
● 6月28日は和解協議であり、害悪の告知として弱い
● 取材申込書も通常の取材であり、害悪の告知として弱い
ということを当然理解していた。
通知書にもこう書かれている。
「示談により削除するのであれば、慰謝の措置として金600万円の支払を条件に検討する旨申し述べました。」
これは典型的な民事的交渉であり、脅しでも不利益告知でもない。
b) だから検察は「二段構えの害悪の告知」を作った
恐喝罪の構成要件は、
● 害悪の告知
● 畏怖
● 畏怖を利用した金銭要求
という因果関係が必要である。しかし本件では、害悪の告知がどこにも存在しない。そこで検察は、次のような“物語”を作った。
● 6月28日:害悪の告知
● 8月2日:追加の害悪の告知
● 8月17日:畏怖を利用した金銭要求
これは一見すると、
「28日がダメでも取材申込書がある」
「取材申込書がダメでも28日がある」
という“二段構え”に見える。しかし実際には、取材申込書は、6月28日が“害悪の告知”であることを前提にしなければ、それ自体を害悪の告知として構成することは不可能である。なぜなら、取材申込書が単なる通常の取材行為であることは、裁判官自身も当然理解していたはずだからである。
つまり、取材申込書は28日に依存した従属的な位置づけだった。
c)  起点である6月28日が崩れた瞬間、全てが崩壊する
この構造のため、
● 28日が和解交渉と認定される
 ↓ ● 取材申込書は通常の取材行為に戻る
 ↓ ● 通知書は単なる回答要求に戻る
という 連鎖的崩壊 が起きる。
つまり、28日が崩れれば、取材申込書も通知書も“恐喝の要素”として成立しない。これが、
「起点である6月28日が崩れた瞬間、全てが崩壊する」
という意味である。
d) 有罪にするためには、6月28日を害悪の告知にするしかなかった
だから裁判官は、検察の起訴状に沿う形で、
● 和解協議を“害悪の告知”に変換し
● 取材申込書を“追加の害悪の告知”に変換し
● 通知書を“畏怖を利用した金銭要求”として接続する
という 無理なストーリーを採用した。
これは、刑法の構成要件論から見ても、 起訴状の構造から見ても、 論理的に導かれる結論である。

[その6] 裁判官はなぜ28日の電話協議をここまで強引に害悪の告知にしたのか
これまでの記事では、検察が描いた「連続性ストーリー」の矛盾や、和解協議の証拠が判決文から不当に排除されている事実を解説してきた。そして、すべての起点とされているのが「6月28日の電話」である。
しかし、実際の録音音声や文字起こしを見れば、これが典型的な「民事仮処分における記事の修正・削除の和解交渉」であることは明白だ。和解交渉を持ち出し、相場を聞き出しているのはレイズ社側の高橋弁護士であり、佐藤君はそれに答えているだけである。脅しや不当な金銭要求は一切含まれていない。
では、なぜ第一審の裁判官は、このあきらかな和解交渉を、ここまで強引に「害悪の告知(恐喝のスタート)」と認定したのだろうか。
そこには、刑事裁判における恐るべき“結論ありき”の事実認定のカラクリが存在する。
1.「6月15日の音声」を逆手にとった巧妙なトリック
弁護側は、6月28日の電話が和解交渉の延長であることを示すため、 6月15日の電話録音を証拠として提出した。この録音では、
・ 記事のどの部分を修正するか
・ どの表現をどう変えるか
・ どの記事は削除できるか
といった、極めて冷静で実務的な“文言調整”が行われている。つまり、 6月15日の時点で、すでに和解協議が始まっていた という決定的証拠である。
ところが裁判官は、この録音をまったく逆の方向に利用した。判決文にはこう書かれている。
「6月15日の会話内容を見ても、本件各記事自体は話題に上がっているが、 金銭を支払うなどの話は一切うかがえない」
そして裁判官は、ここから次のように“飛躍”させた。
「それなのに、6月28日になると突然『慰謝の措置をとるしかない』 『600万円から始まりますね』などと言い出した」
つまり裁判官は、
「15日には金の話がなかった → 28日の金額提示は“突然の要求”」
という構図を作り出し、 「だから28日は和解交渉ではなく、恐喝の始まりだ」 という結論に結びつけたのである。
もちろんこれは事実と完全に逆である。実際には、
・ 和解の話題を持ち出したのは高橋弁護士
・ 「相場を教えてほしい」と聞いているのも高橋弁護士
・ 佐藤君は質問に答えているだけ
・ 15日も28日も一貫して“記事削除の和解交渉”
であり、 「突然の金銭要求」など存在しない。
裁判官は、 和解交渉が順当に進んでいたことを示す6月15日の録音を、 “突然の金銭要求”という虚構のストーリーに変換するために逆手に取ったのである。
2.なぜ6月28日を「和解交渉」と認めるわけにいかなかったのか
裁判官(そして検察)にとって、6月28日を「適法な和解交渉」と認めることは、絶対に避けなければならない“アキレス腱”であった。
もし、「6月28日は、記事削除についての適法な示談金(和解金)の交渉だった」と認定してしまうと、どうなるだろうか。その後に送った「8月2日の取材申込書」は「別件の疑惑に関する純粋な取材行為」であり、「8月17日の通知書」は「和解交渉の続き、および取材への回答の事務的な催促」に過ぎないという弁護側の主張に、極めて強い説得力を与えてしまうからだ。
つまり、6月28日が適法な和解交渉であれば、これら3つの出来事は「恐喝の連続行為」ではなく、「別個の適法な行為が並んでいるだけ」になり、恐喝罪は根底から崩壊する。
恐喝罪を有罪にするためには、「この被告人は、正当な和解交渉をする気など最初からなく、記事の生殺与奪を盾にして企業から大金を脅し取るつもりだったのだ」という一貫した連続ストーリーに押し込む必要があったのである。
3.「弁護士の誘導」を隠蔽し、「言葉尻」だけを脅しに仕立てた
そのストーリーを成立させるため、裁判官は6月28日の電話における佐藤君の一部発言を、かなり強引に「害悪の告知」としてピックアップした。 「僕のさじ加減でこう、記事あげるあげないやってるだけだから」
「そのかわり全部もう Not Found にして、もう記事はあがらない」
これらの発言は、サイト運営者としての事実(自分が掲載権限を持っていること)を述べたに過ぎず、和解交渉の場であれば「お金を払ってくれるなら掲載をやめますよ」という交渉カードの提示として、ごく自然な会話の流れである。
しかも実際の会話では、「ああ、要するにお金ってことですかね」「大体相場だけで教えてもらってもいいですか?」とお金の話を持ち出し、相場を聞き出しているのは高橋弁護士の側なのだ。 しかし裁判官は、この弁護士からの質問や誘導という「前後の文脈」を判決文からきれいに削り落とした。そして、佐藤君の言葉の断片だけを繋ぎ合わせ、「俺のさじ加減一つでお前の会社のネガティブ記事をいくらでも出せるんだぞ、消してほしければ 600万払え」という暗黙の威圧(脅し)であると意訳したのである。
4.結論から逆算された「架空の恐喝ストーリー」
ここまで見れば、裁判官の意図は手に取るようにわかる。
裁判官は、「8月の書面による金銭要求=悪質な恐喝」という結論を先に決めていた。そして、そこから逆算して、最初の金銭の話題が出た6月28日の電話も「恐喝の着手(脅し)」であったと認定しなければならなかったのである。
そのために、6月15日の紳士的・実務的な交渉プロセスは無視され、6月28日の弁護士の質問という文脈も切り捨てられ、「強引な害悪の告知」という架空のシーンが作り上げられた。
司法の場において、客観的証拠がどのように歪められ、結論ありきのストーリーに回収されていくか。本件の事実認定は、その恐ろしい実態を如実に示していると言わざるを得ない。

[控訴審判決編]
一審の誤りを一切検討せず、“推論だけ”で有罪を維持した東京高裁の重大な問題点
令和7年3月19日、東京高裁は佐藤君の控訴を棄却した。
しかし、この控訴審判決は、刑事裁判として看過できない重大な問題を抱えている。
結論から言えば、
控訴審は一審判決の誤りを一切検討せず、証拠評価も行わず、起訴状のストーリーを丸呑みしただけの“追認判決”だった。
一審判決編(全5話)で明らかにしたように、一審には「害悪の告知の不存在」「畏怖の不存在」「記事特定の欠落」「訴因の混乱」など、恐喝未遂罪の成立を根本から揺るがす致命的な誤りが多数存在する。控訴審は、それらを一つも検討していない。
以下では、控訴審判決の致命的欠陥を順に見ていく。
1.  控訴審は「害悪の告知」の再検討を完全に放棄した
控訴審判決は冒頭でこう述べる。
「害悪の告知を伴うものであることは明らかである」
しかし、何が「明らか」なのか一切説明がない。一審で問題となった以下の点を、控訴審は完全に無視した。
● 文氏に伝わったのは「お金を払えば削除する」という結論だけ
● “脅し文句”は文氏に伝わっていない
● メールには交渉の結論しか書かれていない
● 6月15日の和解協議を無視
● 6月28日の会話も和解交渉の延長
● 記事削除交渉は民事上の和解の範囲内
これらは一審判決編の「その1」で詳細に示したとおり、害悪の告知が存在しないことを示す決定的な証拠である。にもかかわらず控訴審は、一審の誤りを一切検討せず、「明らか」と断定するだけで終わらせた。これは控訴審としての審理義務を放棄したに等しい。
2. 控訴審は「畏怖の認定」を証拠に基づいて検討していない
控訴審はこう述べる。
「畏怖させるに足りる害悪の告知を伴うものであることは明らか」
しかし、文氏のメールはこうだ。
「当分は放置にしましょう」
さらに高橋弁護士も、
● 「放置も選択肢」
● 「記事の影響力は大きくない」
● 「示談書を作ればよい」
これらは 畏怖とは正反対の冷静なビジネス判断 である。
一審判決編「その3」で示したように、畏怖の成立には「合理性」が必要であり、本件にはその合理性が一切存在しない。
控訴審は、
● 文氏のメール
● 弁護士のメール
● 和解交渉の経緯
● 記事の影響力の小ささ
これらの客観証拠を一切検討せず、「畏怖したはずだ」という推論だけで有罪を維持した。これは刑事裁判として致命的である。
3. 控訴審は「本件各記事」の特定問題を完全に無視した
「『などの記事』の中には、仮処分事件の裁判資料を転載する記事が含まれる」
しかし、これは一審の最大の誤りである。
一審判決編「その4」で示したように、
● 起訴状の「本件各記事」
 → 「不正な利益を得たなどの記事」
● 実際に削除を求められた記事
 → 「審尋経過の6本の記事(名誉毀損性なし)」
● 裁判官が勝手に追加したもの
 → 「仮処分命令申立書の画像」
三重の矛盾 が存在する。
控訴審は、この核心的問題を一切検討せず、「含まれる」で終わらせている。つまり、記事の特定という恐喝罪の核心を審理していない。
4. 控訴審は「仮処分命令申立書と陳述書の混同」という一審の致命的誤りを放置した
一審判決は、
● 起訴状の「陳述書等」
● 判決文の「仮処分命令申立書」
を混同していた。
文氏が恐怖したのは、
● 仮処分命令申立書ではない
● 陳述書でもない
● 別の記事群(不正関与記事・取材申込み・内容証明)
であるにもかかわらず、控訴審はこの点を一切検討していない。控訴審は、一審の事実誤認をそのまま追認しただけである。
5. 控訴審は「訴因変更の必要性」を誤って否定した
控訴審はこう述べる。
「訴因変更手続を経る必要があるとは解されない」
しかし実際には:
● 起訴状の「本件各記事」
 → 名誉毀損記事
● 判決文の「本件各記事」
 → 審尋経過記事+仮処分命令申立書
完全に別物である。
訴因変更が必要なのは明らかである。
控訴審は、訴因の同一性の検討を一切せず、「必要ない」とだけ述べている。
________________________________________
6. 控訴審は「証拠の再評価」をしていない
控訴審判決は、
● メール
● 録音
● 記事内容
● 証人尋問
● 和解協議の経緯
これらの証拠を一切引用していない。
控訴審判決は、証拠の再評価ゼロ、事実認定ゼロ、論理構成ゼロ。ただ一審を追認しただけである。
7. 控訴審は「推論」で有罪を維持している
控訴審の論理はこうだ。
1. 記事掲載は不利益を与える
2. 金銭要求と記事掲載が近接
3. だから害悪の告知があった
4. だから畏怖したはず
5. よって恐喝未遂罪が成立
しかし、これは 証拠ではなく推論 である。刑事裁判で推論だけで有罪を維持することは許されない。
8. 控訴審は「理由なき断定」で有罪を維持した──司法の説明責任の放棄
控訴審判決の中でも、最も象徴的な一節がある。
「被告人が行った前記一連の要求がB(レイズ)社及びA(文氏)を畏怖させるに足りる害悪の告知を伴うものであることは明らかであり、B社及びAの名誉を毀損する内容が含まれていないから恐喝に当たらないという所論は、独自の見解というほかない。」
一見すると断定的で力強いが、“何が明らか”なのか、判決文は一切説明していない。
● どの言動が害悪なのか
● どの記事が害悪なのか
● どの証拠が畏怖を示しているのか
● なぜ名誉毀損性のない記事で恐喝が成立するのか
これらの核心部分について、控訴審は一切触れず、ただ「明らか」「独自の見解」と切り捨てるだけで結論を維持した。これは、司法判断として最も避けるべき態度であり、控訴審が一審の誤りを検証するという役割を完全に放棄したことを意味する。
9. 結語:控訴審は“一審の誤りを正す場”ではなく、“追認する場”になってしまった
控訴審判決を総合すると、東京高裁は次の三つを同時に行ってしまった。
1. 証拠を検討しない
2. 理由を示さない
3. 一審の誤りをそのまま追認する
これは、控訴審としての本来の役割──
「一審の事実認定と法適用を厳格にチェックする」
という機能を完全に失っている。
そして、この判決を書いた裁判長・伊藤雅人氏は、その後札幌高裁長官に就任し、こう語った。
「良質な司法サービスを提供し続けたい」
しかし、その言葉がどれほどの説得力を持つかは、北海道に赴任する“前”に東京で自ら示した裁判の質が、果たして本当に“良質”と呼べるものであったか──そこにこそ、まず答えが求められるのではないだろうか。